
まだ大丈夫かな…もう少し様子を見たほうがいいのかな…
介護保険の申請を考えたとき、多くの方がここのところで立ち止まります。
実際、
- 歩けている
- 会話もできている
- 今のところ何とかなっている
そんな状態だと、「申請するほどじゃない気がする」そう思ってしまいますよね。
でも、OTとして現場で多くのご家族を見てきて、私は何度も、「もっと早く申請しておけばよかった」という言葉を聞いてきました。
転倒や体調の変化をきっかけに入院し、そこから介護保険の申請につながるケースも少なくありません。
また、入院をきっかけに環境が変わり、少し元気がなくなってしまう方もいます。
介護認定は、困り切ってから申請するものではありません。
むしろ、ご本人が今まで通りの生活を続けるのが、少し大変になってきたと感じたときこそ、考えていい制度です。
- 介護認定はいつ受けるのがいいのか
- 「早すぎる」と言われることはあるのか
- とりあえず申請しても大丈夫なのか
OTの視点から、迷っている人のための判断の目安をお伝えします。
介護認定は「いつ受ける」のが正解?

介護認定って、いったいいつ受けるものなんだろう?
この質問は、とても多いです。
よく聞くのは、
- 歩けなくなってから
- 認知症が進んでから
- 一人で生活できなくなってから
という声。
でも、OTとして現場を見ていて感じるのは、それでは少し遅いこともあるということです。
介護認定は、「何もできなくなったから受けるもの」ではありません。
ご本人の生活に、少しずつやりにくさが出てきたときに、その背景や困りごとを整理するための制度でもあります。
たとえば、
- 立ち上がるときに、以前より時間がかかる
- 歩けてはいるけれど、ふらつきが気になる
- 外出や散歩の回数が減り、家で過ごす時間が増えてきた
こうした変化は、「まだ大丈夫」に見えやすい一方で、生活の中では確実に負担が増えているサインです。
だからこそ、「困り切ってから」ではなく、「少し大変になってきたかも」と感じたタイミングが、介護認定を考え始める一つの目安になります。
介護認定は「困ってから」では遅いこともある

もう少し様子を見てからでもいいかな
そう思っているうちに、少しずつ負担が積み重なっていくことがあります。
介護の大変さは、ある日いきなり大きくなるというより、気づかないうちに、じわじわ増えていくことがほとんどです。
たとえば、最初は「見守るだけ」でよかったことが、
いつの間にか
- 声をかける
- 先回りして準備する
- 一緒について動く
といった対応に変わっていきます。
でもこの段階では、「まだ何とかなっている」「申請するほどじゃない」と感じやすく、支援につながりにくいのが現実です。
さらに、申請をしてから実際に認定結果が出るまでには、ある程度の時間がかかります。
その間も生活は続いていくため、家族だけで抱え込む期間が長くなりやすいのです。
だからこそ、明らかに困り切ってから動くよりも、少し余裕のあるタイミングで申請を考えておくことが、結果的にご本人の生活を守ることにつながります。

ここにたどり着いたということは、もう申請を考えていいサイン
OTが考える|申請を考え始めるサイン

介護認定を考えるタイミングは、「できなくなったかどうか」だけで決まるものではありません。
OTとして思うのは、ご本人の生活の中で「少しずつ無理が出てきていないか」という点です。
こんな変化が出てきたら要チェック

動作や歩行に不安が出てきた
- 立ち上がりに時間がかかる
- ふらつきがあり、転倒が心配になる
外出や活動の量が減ってきた
- 散歩や外出の回数が減った
- 家で座って過ごす時間が増えた
生活の中で「見守り」が増えてきた
- 声かけや先回りが必要な場面が増えた
- 一人で任せるのが不安になってきた
ここまで当てはまったら
どれか一つでも「これ、うちもそうかも」と感じたら、申請を考え始めていいタイミングです。
すべてが当てはまる必要はありません。
「まだ軽いかも」と思う段階で考えておくことが、ご本人の生活を守ることにつながります。
とりあえず介護認定だけ受けても大丈夫?

申請は気になるけれど、今すぐサービスを使うかは決められない
そう感じている方も多いと思います。
結論から言うと、とりあえず介護認定だけ受ける、という考え方でも問題ありません。
介護認定は、申請したからといって必ずサービスを使わなければならない制度ではありません。
認定を受けたあとで
- 今は使わない
- 必要になったら使う
- どんな選択肢があるか知っておくだけ
といった関わり方もできます。
介護認定は「使うかどうかを後で決められる」
介護認定を受けて要介護と判定されると、ケアマネジャーがつきます。
ケアマネジャーは、介護や生活のことで困ったときに相談できる窓口のような存在です。
今はまだ使わなくても、何かあったときに相談先があるかどうかで、支援につながるまでのスピードは大きく変わります。
要支援・非該当でも無駄にはならない

軽い結果だったら意味がないのでは?
と心配されることもあります。
でも、要支援や非該当だったとしても、その時点の状態が記録として残ることには意味があります。
- 状態の変化を説明しやすくなる
- 次に申請するときの比較材料になる
- 「いつから大変だったか」を客観的に伝えられる
将来に向けた準備として考えると、決して無駄にはなりません。
「迷う時点」で、受けていい
申請を迷っているということは、すでに生活の中で何かしらの変化を感じているはずです。
だからこそ、「まだ軽いかも」と思う段階で申請しておくことが、ご本人の生活を守ることにつながります。
介護認定は早すぎると損する?

まだそこまでじゃないのに、申請したら損になるんじゃない?
介護認定を考え始めたとき、こうした不安を感じる方は少なくありません。
でも結論から言うと、介護認定を早めに申請したことで、損をするケースはほとんどありません。
「早すぎる申請」でよくある心配
よく聞くのは、こんな声です。
- 軽く判定されてしまうのでは?
- 一度受けたら、もう変更できないのでは?
- 今後、状態が悪くなったときに不利になるのでは?
ただ、制度上はこうした心配が大きなデメリットになることはほぼありません。
要支援・軽い判定でも、不利にはならない
仮に、要支援や比較的軽い結果だったとしても、
- 状態が変われば、区分変更の申請ができる
- 定期的に更新・再認定が行われる
- その時々の状態に合わせて見直される
という仕組みがあります。
つまり、一度の認定結果で、その後の介護度が固定されるわけではありません。
「記録が残る」ことが、参考になることもある
早めに申請しておくと、その時点の状態が公的な記録として残ります。
これは必ず評価に直結するものではありませんが、あとから状況を説明するときに、参考になることがあります。
たとえば、「いつ頃から生活が大変になってきたか」といった変化を伝える際に、役立つ場面もあります。
「早すぎるかも」と感じる時点で、遅すぎない

まだ軽いかもしれない

「もう少し様子を見たほうがいいかな」
そう感じている段階は、申請としては決して早すぎるタイミングではありません。
むしろ、余裕のあるうちに動いておくことで、その後の選択肢を落ち着いて考えられる、というメリットがあります。

早めに知っておくことで、必要な情報が入りやすくなることもありますよ
介護認定を受けるとどうなる?メリット・デメリット
介護認定を受けると、「生活が一気に変わってしまうのでは?」と不安に感じる方もいます。
でも実際には、認定=何かを強制されるわけではありません。
ここでは、介護認定を受けたあとに起きることをメリット・デメリットに分けて整理します。
メリット
相談できる窓口ができる
介護認定を受けると、要介護の場合はケアマネジャーがつき、介護や生活について相談できる窓口ができます。
「どこに相談すればいいか分からない」という状態から抜け出せるのは、大きな安心材料になります。
選択肢が広がる
認定を受けることで、利用できるサービスや制度を具体的に知ることができるようになります。
今すぐ使わなくても、「こんな選択肢がある」と知っておくだけで、今後の判断がしやすくなります。
家族だけで抱え込まなくてよくなる
介護認定は、家族だけで頑張る状態から、支援につながる入口でもあります。
相談先ができることで、気持ちの面でも少し余裕が生まれることがあります。
デメリット(正直に)
手続きが少し面倒
申請や調査、書類のやり取りなど、どうしても手間がかかるのは事実です。
ただし、一度流れが分かれば、次回以降は対応しやすくなります。
思ったより軽い結果になることもある
申請しても、「想像していたより軽い判定」になることはあります。
ただ、これは決して失敗ではありません。状態に応じて、区分変更や再認定ができる仕組みがあります。
それでも「受けないまま」よりは前に進める
介護認定には、手間や不安がゼロというわけではありません。
それでも、何も分からないまま悩み続ける状態と比べると、一歩前に進めるきっかけになることが多い制度です。
「今すぐ使うかどうか」は、あとから決めても大丈夫。
まずは、状況を整理し、相談先を持つその一歩として考えてみてもいいかもしれません。
申請が遅れると起きやすい3つのこと
介護認定は「本当に必要になったら申請しよう」と思っているうちに、タイミングを逃してしまうことがあります。
現場で見てきた中では、申請が遅れたことで、結果的に選択肢が狭まってしまったと感じる場面も少なくありません。
ここでは、申請が遅れたときに起きやすいことを3つに分けて整理します。
①頑張りすぎると、本当の大変さが伝わりにくくなる
介護認定は、「普段の生活で、どれくらい支えが必要か」をもとに判断されます。
限界まで頑張ってしまうと、
- 家族の手助けで何とかできている
- 本人の無理で生活が成り立っている
といった状態が続き、生活の大変さが外から見えにくくなることがあります。
結果として、実際よりも軽く受け取られてしまうこともあります。
②家族が無理を重ねてしまう

もう少しだけ。。。今は何とかなっているから
そう思っているうちに、家族の負担が少しずつ積み重なっていくことがあります。
余裕がなくなってからでは、
- 落ち着いて相談する
- 情報を比べて選ぶ
といったことが難しくなり、選択肢を考える前に限界が来てしまうこともあります。
③転倒や体調悪化が「きっかけ」になりやすくなる
申請のタイミングが、転倒や体調悪化、入院をきっかけに行われるというケースも少なくありません。
入院後は、医療機関や関係機関が調整してくれるため、手続き自体が大きな負担になるとは限りません。
ただ、その一方で、元気なうちに選べたはずの選択肢が、限られてしまうこともあります。
たとえば、少しの見守りやサポートを入れながら生活を続ける、という選択肢が、検討しにくくなることがあります。
結果として、「もう少し早く動いていれば違ったかもしれない」と感じる場面につながることもあります。
認定調査では「伝え方」も大切
介護認定は、申請すれば自動的に生活の大変さが伝わるわけではありません。
どんな場面で困っているのか、どんな無理が重なっているのかをどう伝えるかで、受け取られ方が変わることもあります。
調査のときの伝え方については、こちらの記事で詳しくまとめています。
【認定調査で損しない伝え方】
親が介護認定を嫌がるとき、OTはこう説明している

介護認定の話を出したとき、親からこんな反応が返ってくることがあります。
- 「まだそこまでじゃない」
- 「人の世話になるのは嫌だ」
- 「介護認定なんて、大げさだ」
こうした言葉の裏には、不安やプライド、今の生活を失いたくない気持ちが隠れていることが少なくありません。
無理に説得しようとすると、かえって反発が強くなってしまうこともあります。
「介護認定=介護施設」ではないことを伝える
まず大切なのは、介護認定は、すぐに施設に入るためのものではないということを丁寧に伝えることです。
OTちゃりんとしてよく使う言い方は、こんな感じです。

家での生活を長く続けるための準備だよ
認定を受ける=生活が変わる、と思われがちですが、何も変えない選択もできる制度だと伝えます。
「できなくなったから」ではなく「続けるため」と伝える
親が一番傷つきやすいのは、「もうできない」「無理だから」という言葉です。
その代わりに、

今の生活を元気に長く続けていくために一緒に考えたい
という伝え方をします。
介護認定は、できなくなった証明ではなく、今の生活を支えるための仕組みだと言い換えることが大切です。
「使うかどうかは、あとで決めればいい」
抵抗が強い場合は、「使う・使わない」を今決めなくていいことも安心材料になります。

申請するだけで、すぐ何かを使わなきゃいけないわけじゃないよ

困ったときに相談できる先を、先に作っておく感じかな
こうした言い方は、親の警戒心を下げやすくなります。
それでも嫌がるときは、時間を置いてもいい
一度で納得してもらえなくても、それは珍しいことではありません。
- 今日は話題に出しただけ
- 次は少し制度の話をする
- また様子を見て、タイミングを探す
何度かに分けて話すことも、大切な進め方です。
まとめ|迷っているなら「今」が考えどき
介護認定は、勇気や覚悟が必要な決断ではありません。
誰かを見捨てるものでも、責任を放棄するものでもありません。
今の生活を守り、これからの選択肢を残すための準備です。
「まだ大丈夫」と感じている今だからこそ、一度立ち止まって申請してみる価値があると思っています。
この記事では、
- 介護認定を考えるタイミング
- 早すぎる・遅すぎるの不安
- 親への伝え方
をOTの視点から整理してきました。
もし、「申請するなら、どう伝えればいいか不安」「調査でうまく話せるか心配」という方は、前の記事も参考にしてみてください。



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