「これくらいならヘルパーさんにお願いできるよね?」そう思って頼んだことが、思いがけず「それはできません」と断られる。
介護を頑張っているほど、そんな瞬間にモヤっとした経験はありませんか?
実は、ヘルパーさんには「できること」と「できないこと」が、介護保険のルールではっきり決められています。
このあと紹介するヘルパーができないこと一覧も、そのルールに沿って整理されたものなんです。
この記事は、作業療法士(OT)の視点からまとめました。
- 医療行為で「できない」と言われる理由
- 金銭管理や家事でどこまで頼めるのか
- 断られたときの正しい対処法
- 制度で対応できない部分をどう補うか
やさしく・わかりやすく整理します。
読み終わるころには、

これは安心して頼める

これは別のサービスを使おう
と、あなたの中に迷わない判断基準ができて、介護のモヤモヤがスッとなりますよ。

ヘルパーさんが断る背景がわかったところで、
次は「医療行為のどこがダメなのか」を具体的に見ていきましょう。
人命に関わる「医療行為」とそれに準じること

さて、一番「断られる」ことが多いのが、この医療行為に関することです。
「ま、確かにね」と納得できる部分もありつつ、「でも、このちょっとぐらいなら…」と、つい思ってしまうかもしれません。
このモヤモヤ、本当によく分かります。
しかし、医療行為に関しては、ヘルパーさんの都合ではなく、日本の法律(医師法など)でガッチガチに決められているんです。
シンプルに言うと、医療資格(医師や看護師など)がない人が、命に関わる行為をしてはいけないという、絶対のルールなんですよね。
万が一の事故を防ぐためにも、これは絶対に譲れない線引きなんです。
以下のような行為は全てNGです。
| 分類 | できないこと(NG) | できること(OK) | 理由 |
| 処置行為 | 褥瘡処置、点滴管理、カテーテル管理 | 体温測定、湿布を貼る | 医師法で禁止されているため |
| 投薬関連 | 薬を仕分ける、投薬量を調整する | 飲み忘れ防止の声かけ、薬を手渡す | 誤薬リスクが高く、専門職でないと不可 |
| 専門ケア | 胃ろう管理、痰吸引、摘便、血糖測定 | なし | 命に関わるため専門職が必要 |
【作業療法士(OT)からのワンポイント】
じゃあ何ならOKなの?というと、「誰でもできること」だけです。
例えば、熱を測る、湿布を貼る、飲み忘れがないように薬を渡す(見守る)程度なら大丈夫。
上でNGとしたような専門的なケアが必要になったら、もうヘルパーさんの手に負える範囲を超えています。
これは、あなたが「頑張って家族で対応する」話でもありません。
ぜひ「訪問看護ステーション」という、看護師さんが来てくれるサービスを頼ってください。
もしくは、ケアマネさんや主治医に相談して、「研修を受けたヘルパーさん」によるサービスが可能か確認する手もあります。
命に関わることですから、プロの力を借りて、安全を最優先にしましょう!
金銭トラブルを防ぐための「金銭・貴重品の取扱い」
ヘルパーさんが絶対にできないことの2つ目は、お金や貴重品の管理です。
これは「ヘルパーさんがケチだから」とか、「うちのことは信用してないの?」なんて話じゃ全然ないんです。
シンプルに、利用者さん、家族、そしてヘルパーさん自身、全員を守るための鉄のルールなんですよね。
万が一、「あれ?お財布から一万円札がない!」なんてことになったら、もう信頼関係はガタガタに崩れてしまいます。
そうならないように、金銭管理は業務範囲外とスパッと線引きされているんです。
以下のような行為は基本的にNGです。
| 分類 | できないこと(NG) | 理由 |
| 預かり・保管 | 現金・通帳・印鑑・カードの管理 | 紛失・盗難時にトラブルになるため |
| 金銭取引 | ATM操作、高額商品の購入 | 金銭トラブル防止のため |
| 貴重品 | 宝石・時計などの移動や保管 | 金銭トラブル防止のため |
【作業療法士(OT)からのワンポイント】
唯一、買い物代行のときだけは、必要な金額を預かることになります。
でも、これもサービスが終わったらレシートとおつりを必ず一緒に確認するのが義務。
ヘルパーさんが金銭管理を断るのは、「信頼を壊したくないから」のサインだと理解してあげてください。
「親の通帳管理、もう限界!」と感じているあなたへ。
頑張って全部自分でやらなくても大丈夫です。
成年後見制度とか、地域の社協(社会福祉協議会)がやってる金銭管理のサポート(日常生活自立支援事業)もあるので、専門の第三者に頼って、あなたの負担を減らすことを真っ先に考えてみましょう!
成年後見制度は、一度利用すると取り消しが難しく、財産の管理や利用方法に制約が生まれるなど、いろいろと決まりごとがあります。
焦らず、ご家族でメリット・デメリットをしっかり理解し、納得してから利用してくださいね。
ヘルパーは『生活援助』の範囲外はできません。どこまでやってくれる?家族の生活との線引き

さて、医療行為と並んで、ヘルパーさんができないのが「家事」に関するお願いです。

お掃除や食事の準備はしてくれるはずなのに、なんでダメなの?
と悩んでしまうかもしれません。
理由はシンプルです。
ヘルパーさんの仕事は、あくまで『利用者さん本人の日常生活の援助』に限定されているからです。
この線引きを知ることが、あなたのモヤモヤを解消する一番の近道になりますよ!
一緒にできること・できないことを見ていきましょうポイントを見ていきましょう。
| 家事の内容 | ヘルパーができる | ヘルパーができない | 理由 |
| 食事作り | 本人の食事作り | 家族の食事作り | 利用者本人限定のため |
| 洗濯 | 本人の衣類 | 家族の洗濯 | 家族の家事は業務外 |
| 掃除(軽度) | 本人の生活スペース | 家族部屋・大掃除 | 日常生活の範囲を超えるため |
| 買い物 | 本人の日用品 | 家族分の買い物・大量購入 | 「家族の家事」は対象外 |
| その他 | ゴミ出し(本人の分) | ペットの世話、来客対応、自家用車掃除 | 本人の生活に直結しないため |
【作業療法士(OT)からのワンポイント】
ヘルパーさんが窓拭きやエアコン掃除を断るのは、「制度のルール上、できない」というだけの話。
ヘルパーさんがしたくないからではないんです。
大事なのは、「日常以外の掃除は難しい」という事実を冷静に受け止めることです。
その上で、「頑張って自分でやらなきゃ…」と抱え込まず、できない部分はプロの家事代行(自費サービス)に頼るなど、外部の力を借りましょう。
あなたの負担をゼロにすることが、結果的に長く笑顔で介護を続ける秘訣ですよ!
ヘルパーさんの目的外!『生活に必須ではないこと』の線引き
ここまで見てきた医療行為や家事は、比較的「はっきりNO」と言われやすい部分です。
しかし、介護保険のサービスには、「制度の目的」から外れることで断られてしまう、意外なヘルパーさんができないことの介助や作業もあります。
見落としがちなポイントを見ていきましょう。
| 外出内容 | 訪問介護 | 理由 |
| 近所の買い物(本人の生活) | ◎ 可能 | 日常生活に必要なため |
| 医療受診の付き添い | △ 事業所により判断 | 安全面の理由・時間制約 |
| 趣味・娯楽の外出 | × 不可 | 介護保険の目的外 |
| 葬儀・結婚式など特別行事 | × 不可 | 責任の範囲外 |
| 長距離移動 | × 不可 | 事故・トラブルのリスク |
【作業療法士(OT)からのワンポイント】
散歩や運動に関しては、訪問リハビリで専門的なサービスを受けている方も多いかもしれません。
それでも、リハビリは60分や40分と時間が限られているため、「もっとやりたいことがあったのに…」とモヤモヤすることもありませんか?
この時間との戦いこそ、介護者が辛くなる大きな要因の一つだと私は感じています。
介護保険の枠は「生活に必須なこと」までしかカバーできません。
でも、「楽しみに関わる活動」は、認知面の活性化や体力の維持に繋がる、生きがいにとって最も大切な要素です。
制度の枠からこぼれてしまう、この「生きがい」や「楽しみ」といった部分に、実は私たち作業療法士(OT)の持つ視点が役に立ちます。
まとめ:介護保険制度の外にあるあなたの選択
ここまで、ヘルパーさんができないこと一覧を見てきましたが、いかがでしたか?
「え、ここもできないんだ〜」と思うことや、「うちでは、実はここやってもらってる…」なんて、ギクッとした部分もあったかもしれません。
昔は「ついでだし、やってあげるよ」と柔軟に対応してくれたヘルパーさんもいましたが、今は引き継ぎの問題や苦情につながるリスクを考えると、制度外のことはしないヘルパーさんがほとんどです。
(まぁ〜本当はダメなんですけどね!)
でも、実はヘルパーさんも「もっと利用者さんの役に立ちたいのに、保険のルールでできない…」というモヤモヤを抱えながら支援してくれています。
介護保険という「制度の枠」の中では、「利用者さんのしたいこと」と「提供できるサービス」の間に、どうしてもジレンマが生まれてしまうんですよね。
- ケアマネに「大変なこと」を共有して、他のサービスが利用できないか相談する
- 医療行為が必要なら、訪問看護を組み合わせて安全に任せる
- 生活援助外の家事・外出は、自費サービスで負担を減らす
これらを組み合わせることで、「できないこと」ばかりに目を向けず、あなたの生活に合ったできる形が必ず作れます。
色々な思いはあると思いますが、私たち支援職も、利用者さんには楽しく、安心して暮らしてほしいと心から願っています。
そのために「制度でできること」だけでなく、できない部分まで含めて寄り添いたいと考えているんです。
介護保険内で解決できない「生きがい」や「楽しみ」、「家族の心の余裕」といった部分をカバーするために、実は自費のヘルパーとして動いている人もたくさんいます。
もし、制度では「諦めるしかない」と思っていた「あれがしたい」「これをお願いしたい」があるなら、ぜひ自費サービスもひとつの選択肢として検討してみてくださいね。


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