在宅介護を続ける中で、「このままでいいのかな」と立ち止まりたくなる瞬間はありませんか。
この記事では、在宅介護を「続けるべきか」「何かを変えたほうがいいのか」その答えを今すぐ出すことを目的にはしていません。
今はまだ決めなくて大丈夫です。
判断する前に、一度整理していい段階かどうかを一緒に考えるための記事です。
- 在宅介護に、これ以上の無理を感じ始めている
- イライラや疲れが続き、「このままでいいのか」と迷っている
- 介護を続けたい気持ちはあるが、今の形には限界を感じている
- 「続ける・変える」の判断を、一度整理したいと思っている
在宅介護が「限界かもしれない」と感じるあなたへ
在宅介護をしていて、ふとこんな気持ちがよぎることはありませんか。

もう限界かもしれない

この生活、いつまで続くんだろう

私が弱いだけなのかな…
イライラしてしまう自分を責めたり、疲れているのに「まだ頑張らなきゃ」と無理を重ねてしまったり。
でも、その感覚はあなたの覚悟や頑張りが足りないからではありません。
作業療法士として多くの介護現場を見てきて感じるのは、在宅介護で「限界かも」と感じるとき、そこには必ず生活環境や支援の形のズレがあるということです。
今は、「どうするか」を決めるよりも、立ち止まって状況を整理していい段階なのかもしれません。
次の章では、作業療法士の視点から、在宅介護で「限界」を感じやすくなるときによく見られるサインについてお伝えします。
もし今、気持ちがいっぱいいっぱいで判断や整理をする余裕がないと感じているなら、まずは気持ちの整理からでも大丈夫です。
「限界」はわがままじゃない。OTが見る3つのサイン

在宅介護で「限界かもしれない」と感じるとき、多くの方がまず自分を責めてしまいます。

私の我慢が足りないのかな

もっと頑張っている人もいるのに
でも、作業療法士として現場を見てきて感じるのは、そうした気持ちが出てくるときには、頑張りすぎているということです。
それは、心が弱いからではなく、今の生活環境や支援の形が合わなくなってきている合図でもあります。
ここでは、OTの視点からよく見られる3つのサインをお伝えします。
身体のサイン:自分の不調を後回しにしていませんか
- 慢性的な腰痛や肩こりが続いている
- 睡眠時間が短く、眠っても疲れが取れない
- 本当は病院に行きたいのに、自分の通院を後回しにしている
介護をしていると、どうしても「自分のことは後で」となりがちです。
でも、身体の不調を我慢し続けている状態は、すでに無理が積み重なっているサインでもあります。
心のサイン:以前なら流せたことに苛立ってしまう
- 同じことを何度も聞かれて、強い口調になってしまう
- 些細な一言に、思わず感情的になる
- あとから自己嫌悪や罪悪感を感じる
これは、優しさがなくなったわけではありません。
余裕が削られ、感情を受け止めるエネルギーが残っていない状態とも言えます。
生活のサイン:「介護だけの人生」になっている感覚
- 仕事や自分の時間がほとんどなくなった
- 予定はすべて介護中心で決まる
- この生活がいつまで続くのか想像できない
「気づいたら、介護以外の自分がなくなっていた」そんな感覚を持つ方も少なくありません。
これは覚悟の問題ではなく、生活のバランスが崩れているサインです。
OTから伝えたいこと
これらのサインが出ているとき、必要なのは「もっと頑張ること」ではありません。
- 人を増やす
- 関わり方を変える
- 生活の形を見直す
これらのサインは、「今のやり方を一度見直してもいい」という合図なのかもしれません。
「続ける」か「変える」か。今は決めなくていい
在宅介護で限界を感じ始めると、多くの人がこんなふうに考えてしまいます。
- このまま在宅介護を続けるしかない
- もう無理なら、施設に入れるしかない
でも、この二択で考えること自体が、しんどさを強めてしまうことがあります。
「続ける」か「やめる」か。
「在宅」か「施設」か。
白か黒かで考えようとすると、どちらを選んでも後悔しそうで、身動きが取れなくなってしまうのです。
今は「決断」ではなく「整理」の段階
ここまで読んでくださったあなたは、もう十分に考えてきた人だと思います。
だからこそ、今必要なのは「覚悟を決めること」ではありません。
今の段階で大切なのは、「今のままでは厳しいかもしれない」という事実を感じることです。
それは、介護を投げ出すことでも、逃げることでもありません。
これから先を考えるための、とても大切なスタートラインです。
「続ける」ことにも、「変える」ことにも、途中の選択肢がある
在宅介護は、「今の形をそのまま続ける」か「すべてを変える」かの二択ではありません。
たとえば、
- 人を増やす
- 関わり方を少し変える
- 一部だけ外の力を借りる
そんな途中の選択肢もあります。
そして、その延長線上に「施設に移る」という選択肢もあります。
施設を選ぶことは、「介護をやめる」ことではない
「施設に入れる」と聞くと、どうしても「最後の手段」「負け」「申し訳ない」そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。
でも、施設を選ぶことは介護を放棄することではありません。
生活の場を変えることで、介護の役割を分け、家族としての関係を守るという選択でもあります。
作業療法士の立場から見ても、施設への移行は「人を増やす」「環境を整える」ことの延長線上にある選択肢の一つです。
決めなくていい。でも、考えていい
今はまだ、在宅を続けるか、施設に移るかを決める必要はありません。
ただ、「施設も選択肢の一つとして考えていい」ということだけ、心の片隅に置いておいても大丈夫です。
次の章では、立ち止まって判断するために、自分に問いかけてほしいいくつかの質問を紹介します。
立ち止まって「判断」するための3つの質問

ここまで読んで、「続けるか、変えるか」まだ答えは出ていないかもしれません。
それで大丈夫です。
この章では、今すぐ決断するためではなく、自分の状況を整理するための質問を3つ紹介します。
紙に書き出しても、頭の中で考えるだけでも構いません。

この3つは、これからの生活を考えるための目安です
質問① 1年後も、今の生活を笑顔で続けられているイメージが持てますか?
今の生活を、そのまま1年続けたとしたら。
あなたは、どんな表情をしていますか。
今と同じ毎日を、受け止められそうですか。
「続けなきゃいけないか」ではなく、「続けられそうか」という視点で考えてみてください。
質問② もし、介護から少し離れる時間ができたら、あなたは何を一番したいですか?
誰かに介護を任せられる時間ができたとしたら。
- 休みたい
- 仕事に集中したい
- 家族として、ただ一緒に過ごしたい
ここで出てくる答えは、あなたが本当は何を必要としているのかを教えてくれます。
質問③ もしあなたが倒れてしまったら、一番困るのは誰でしょうか?
少し厳しい質問に感じるかもしれません。
でも、介護をしている人が倒れてしまうと、困る人は一人ではありません。
- 介護を受けている親
- 家族
- そして、あなた自身
あなたが元気でいることも、介護を続けていくために、とても大切なことです。
この質問に「正解」はありません
3つの質問に、正しい答えや間違った答えはありません。
ただ、これらの問いに向き合うことで、
- 今のままでいいのか
- 何かを変えたほうがいいのか
そのヒントが、少しずつ見えてくるはずです。
次の章では、この「迷い」をどうやって具体的な行動につなげていくか、考え方の整理をしていきます。
まとめ:今日やるのは「決断」ではなく「整理」
ここまで読んで、少しだけ考える時間は持てましたか?
在宅介護で「限界かも」と感じるのは、決しておかしなことではありません。
我慢が足りないわけでも、弱いわけでもない。
それだけ、ここまで一生懸命やってきたということだと思います。
今日やるのは、「続ける」「変える」を決めることじゃなくて大丈夫です。
まずは、今のままだと少ししんどいかもしれないなと気づけただけで、十分。
もし次に何かするとしたら、「どうするか」じゃなくて、「誰に相談できそうか」を思い浮かべるところからでいいと思います。
家族でも、ケアマネでも、役所でも、そして、この記事を書いている私のような専門職でも。
一人で抱え続けなくていいし、完璧な答えを出さなくても大丈夫。
今日はここまででOKです。
また、しんどくなったら、ふらっと戻ってきてくださいね。


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